迷える女
瀬戸内晴美
日本文学男女の愛と欲を様々な角度でとらえた作品集 --克子はもう、何といつていいかわからない。まさか、こんなにまで決定的な勝利感を、二十年もたつてから早苗に対して味わおうとは空想もしてみなかつたことだ。早苗は、まさか、若い美青年に襲われるというようなスリルと快楽には無縁だろう。克子は、急に速夫がいとしくなり、この男が帰つたら、二階の速夫の部屋を訪ねてみようかと思つた。(「男客」)-- 子どものころから劣等感を味わってきた克子。とくに早苗には、小学校から女学校まで容姿でも才能でもまったく歯が立たなかった。時が流れ、流行作家の妻となっていた克子は、夫の甥に迫られ、自分の魅力が残っていたことに幸せな気分になった。続いて早苗の夫と名乗る人が現れたが、そのしょぼくれた風采を見て、克子は優越感を覚える。だが、その男の正体は信じがたいものだった……。 男女の愛と欲を描いた「男客」「ある晴れた日に」「女たらし」など7つの短篇に、表題作「女箸」を含む掌篇15作から成る「星くず」を加えた名作品集。
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